すい臓の病気(膵炎・膵のう胞・すい臓がんなど)
すい臓は、胃の裏側にある長さ15cmほどの臓器で、食べ物の消化を助ける「膵液」という消化酵素を分泌する働きと、血糖値をコントロールする「インスリン」などのホルモンを分泌する重要な役割を担っています。
しかし、その重要性とは裏腹に、すい臓は「沈黙の臓器」の一つであり、病気が発生しても初期には症状がほとんど現れません。特に「すい臓がん」は、早期発見が非常に難しく、見つかったときにはすでに進行していることが多い、予後の厳しい病気として知られています。
だからこそ、すい臓の病気は、リスクのある方が定期的に検査を受けること、そして少しでも気になる症状があれば、すぐに消化器を専門とする医師に相談することが何よりも大切です。
尾花医院では、日本消化器病学会の専門医である院長が、すい臓の病気に関するお悩みやご相談に専門的な立場から対応し、腹部超音波(エコー)検査などによる初期診断を行っています。
すい臓の病気の主な症状
すい臓の病気は、初期には症状が出にくいのが最大の特徴です。しかし、病気が進行すると以下のような症状が現れることがあります。一つでも当てはまる場合は、お早めにご相談ください。
- 上腹部や背中の痛み(特に、持続的で強い痛み)
- 食後に悪化する腹痛や背部痛
- 原因不明の体重減少
- 黄疸(おうだん)(皮膚や白目が黄色くなる、尿の色が濃くなる)
- 食欲不振
- 吐き気、嘔吐
- 脂肪便(白っぽく、水に浮くような便)
- 急に糖尿病になった、あるいは急に血糖値のコントロールが悪くなった
特に、「急な糖尿病の発症・悪化」は、すい臓がんのサインである可能性があり、注意が必要です。
すい臓の代表的な病気
急性膵炎
何らかの原因で、すい臓自身が分泌する消化酵素(膵液)によって、すい臓自体が消化されてしまい、急激な炎症を起こす病気です。主な症状は、みぞおちから背中にかけての突然の激しい痛みで、吐き気や嘔吐を伴います。主な原因はアルコールと胆石です。重症化すると命に関わることもあるため、緊急の入院治療が必要となります。
慢性膵炎
長期間にわたる飲酒などによって、すい臓に持続的な炎症が起こり、すい臓の細胞が少しずつ破壊されて硬くなっていく病気です。初期には上腹部や背中の痛みを繰り返しますが、進行するとすい臓の機能が低下し、消化不良による下痢や体重減少、さらにはインスリンを分泌できなくなることによる糖尿病を発症します。
膵のう胞(すいのうほう)
すい臓の中に、液体が溜まった袋(のう胞)ができる病気です。多くは健康診断の腹部エコー検査などで偶然発見されます。ほとんどは良性ですが、中には膵臓がんの前段階であったり、がん化するリスクを持つタイプ(膵管内乳頭粘液性腫瘍-IPMNなど)も存在します。そのため、膵のう胞を指摘された場合は、症状がなくても専門医のもとで定期的にエコー検査などを受け、大きさや形に変化がないかを経過観察していくことが非常に重要です。
すい臓がん(膵がん)
早期発見が極めて難しく、治療が困難ながんの代表格です。その理由は、初期症状がほとんどなく、すい臓が体の深い場所にあるため、通常のエコー検査では全体を詳細に観察しにくいことがあるためです。 しかし、早期発見できれば治療の選択肢も広がります。以下のようなリスク因子がある方は、特に注意が必要です。
- すい臓がんの家族歴がある
- 慢性膵炎と診断されている
- 糖尿病を患っている
- 肥満
- 喫煙
- 膵のう胞を指摘されている
- 大量飲酒の習慣がある
すい臓の病気の早期発見のために
すい臓がんには、胃がんや大腸がんのような確立された検診方法がありません。だからこそ、リスクのある方が、腹部超音波(エコー)検査などの画像検査を定期的に受けることが、早期発見への唯一の道となります。
腹部エコー検査は、身体への負担なく、すい臓の形や大きさ、膵管の拡張、腫瘍やのう胞の有無などを調べることができる非常に有用な検査です。当院では、この腹部エコー検査を初期診断の柱としています。
当院のすい臓疾患の診療
私たち尾花医院では、発見が難しいすい臓の病気に対して、以下の体制で診療にあたっています。
- 消化器病専門医による丁寧な診察 患者様の症状や生活習慣、家族歴などを詳しくお伺いし、すい臓疾患のリスクを的確に評価します。些細なことでも気になる点は何でもお話しください。
- 腹部超音波(エコー)検査による初期診断 消化器の専門知識を持つ院長自らが、丁寧にエコー検査を行い、すい臓の状態を観察します。
- 高度医療機関との緊密な連携 エコー検査で異常が疑われたり、より精密な検査(CT、MRI、超音波内視鏡など)が必要と判断されたりした場合は、遅滞なく、地域の基幹病院や大学病院などの高度医療機関へご紹介します。診断から治療まで、患者様がスムーズに最適な医療を受けられるよう、責任を持って橋渡しをいたします。
院長より
「すい臓」という臓器の名前に、どこか漠然とした、そして深刻なイメージをお持ちの方は少なくないかもしれません。事実、すい臓の病気、特にすい臓がんは、早期発見が難しく、私たち消化器医にとっても非常に手強い相手です。
だからこそ、私は、皆様の身近な「かかりつけ医」として、この手強い病気を見逃さないための「最初の砦」でありたいと強く考えています。
「最近、背中の痛みが続いている」「急に血糖値が高くなった」「家族にすい臓がんの人がいるので心配だ」 このようなご不安を抱えていらっしゃる方は、決して一人で悩んだり、様子を見たりしないでください。その不安を、私たち専門家にご相談いただくことが、早期発見への最も重要な一歩となります。
当院で行う腹部エコー検査は、その第一歩です。もちろん、エコーだけですべてがわかるわけではありません。しかし、専門医が注意深く観察することで、病気の小さなサインを捉え、次のステップ(精密検査)へと繋げることができます。
高槻市にお住まい、お勤めの皆様が、すい臓の病気に対する正しい知識を持ち、適切なタイミングで検査を受けられるよう、全力でサポートしてまいります。どんな些細なご心配でも構いません。どうぞ、お気軽にご相談ください。
